事業主のために就業規則を作成しましょう

 事業主の皆さまに質問します。

「あなたの就業規則は、どのようなきっかけで作成しましたか」

私が今まで経験した中で以下のようなお答えが多いです。

 1.監督署やハローワークの指導があったので作成した

 2.銀行や生命保険会社に言われて作成した

 3.助成金の申請で必要だったので作成した

 4.従業員が増えてきて、労働時間や休日のルール作りのために作成した

上記1から3までの理由の場合、事業主さまが自主的に作成したものでないため、事業主さまの思いがこもったものではない可能性があります。

 

「そして、その就業規則はどのように作成しましたか」

 1.どこかの会社の就業規則を真似して作成した

 2.厚生労働省のモデルの就業規則を参考にして作成した

 3.税理士や行政書士の先生に聞きながら作成した

以上のようなお答えになる場合、その就業規則は非常に危険な状態のものになっている可能性があります。

それはなぜか?

 1.就業規則が他の会社のものやモデルのものであると、その会社の実情に合ったものでないということ

 2.モデルのものは法律以上の規定になっているため、実際そのように運用するには中小企業の場合難しいということ

 3.就業規則の内容が従業員の労働条件になっているので、それを守らない場合に後で従業員に訴えられる可能性があること

 4.労働法を専門分野にしていない士業に相談した場合、法律改正等に対応していない可能性があること

などが挙げられます。

 また、社労士の先生に作成してもらった就業規則であっても、何年も変更していない場合は、法律改正に対応していないため、不備なものになっています。

 就業規則というものは、役所や誰かから指摘されて作成するのではなく、事業主様のために、会社を守るために作成することをお勧めします。今まで記載した内容に該当する会社は早急に就業規則の見直しをしていただきたいと思います。

事業主のための就業規則 採用編

 労働者は事業所に雇用されると、労働基準法や労働契約法などの法律で守られますので、事業主としては法律に則って労働者を雇用しなければならないという義務が生じますが、「どのような労働者を採用するか」は原則として自由です。採用というのが事業主にとっては、一番法律に関係なく自由に選択できるところです。事業主にとって「いい人」に長く勤務して頂きたいのですから、「いい人」を採用できるような就業規則にしなければいけません。

 

 事業主のための採用規定はどのようなものがいいのか、ポイントをまとめました。

1.多少の費用がかかっても選考試験を行う

 適性検査や性格診断などは、書籍やソフトなど様々なものが販売されていますので、そのようなものを利用して採用することをお勧めします。

2.履歴書は必ず自書のものを提出してもらう

 パソコンで記入したものは、以前に作成したもので、この事業所に入社するために作成したものではない可能性があります。自書で記入した場合は、どのような文字を書くのか、そして丁寧さや一生懸命さも分かりますので、採用するかどうかの判断材料になります。

3.直近3カ月以内の健康診断書を必ず提出してもらう

 健康状態に問題がある人は採用する段階で把握しておくのが必須です。また、健康診断の結果だけでは分からない既往歴について「健康に関する申告書」を提出してもらうというのもお勧めです。

4.採用が決まった人には、身元保証書と誓約書を期限内に提出させる

 身元保証書は何か事業所に損害を及ぼした時に連帯して保証してもらうもので、誓約書は事業所内の決まりごとを守らせるものです。どちらも問題を起こさないように意識づけるために必要です。また、提出期限を守れるかどうかも今後の仕事に対する態度として重要です。

 

以上のようなポイントを入れた就業規則の規定例は次のとおりです。

(選考時の書類)

 就職を希望する者は、選考試験の日までに以下の書類を提出しなければならない。

 @自書による履歴書(3カ月以内に撮影した写真貼付)

 A職務経歴書

 

(採用)

 使用者は就職を希望する者の中より、選考試験に合格し、所定の手続きを経た者を従業員として採用する。

2.採用された従業員は次の書類を提出しなければならない。

 @住民票記載事項証明書

 A健康診断書(3か月以内のもの)

 B源泉徴収票(暦年以内に前職がある者)

 C基礎年金通知書、雇用保険者証(前職がある者)

 D身元保証書

 E誓約書

 F免許が必要な職種は当該免許証の原本

 Gその他使用者が必要と認めたもの

*原本提出するのは、偽造されることがあるためです。原本確認後は、コピーをとって返却してください。

 

 「就業規則」「健康に関する申告書」「身元保証書」「誓約書」の書式についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

 

事業主のための就業規則 試用期間編

 従業員を採用したら、必ず「試用期間」を定めるようにしましょう。「試用期間」とは、従業員がその事業所の正社員として適性であるかどうか見極めるための期間ですので、もし、試用期間中に期待していた能力と全然違っていたとか、健康上問題があって仕事に支障があるなど何か問題が発生した時に、「試用期間満了により退職」してもらい易くするために、必ず設けるようしましょう。

 ただ、試用期間満了で退職して頂くためには、以下の点に気をつけましょう。

 1.採用時に、試用期間の契約書を作成し、内容をよく説明しましょう。その時に、どのような場合に正社員になれないか、よく説明しておきましょう。そして、その契約書の内容に同意したという署名を記入してもらいましょう。

 2.試用期間は3カ月から6カ月が一般的です。(あまり長いといつまでも従業員の不安定な状態が続きますので、公序良俗に反します。)

 3.最初の試用期間で判断できない場合がありますので、試用期間が延長できる仕組みがあるほうがいいです。

 4.試用期間とはいえ、採用後14日を経過すれば、解雇予告や解雇手当は必要になってきますので、14日以内に早く決断するか、試用期間満了日の30日前には正社員になれないことを伝えるようにしましょう。

 

以上のようなことを参考にした就業規則の例は以下の通りです。

(試用期間)

 新たに採用した者については、原則として採用日から3カ月間を試用期間とする。

2.試用期間中に本採用とすることの判断ができないときは、前項の期間を最長3カ月間延長することがある。

3.本採用の可否は、試用期間中の勤務態度、健康状態、能力等を総合的に勘案し、試用期間の満了日までに決定し、通知する。

4.試用期間中の者が、次の各号のいずれかに該当した場合、試用期間中もしくは試用期間満了時に本採用せずに解雇する。ただし、採用後14日暦日を経過していない場合は、解雇予告手当を支払わずに解雇する。

 @遅刻、早退、欠勤が複数回あり、出勤状況が不良である

 A上司の指示に従わない、同僚との協調性がない、誠実に勤務する姿勢がないなど勤務態度が不良である

 B必要な指導をしたものの、当社の求める能力に達せず、改善の見込みがない

 C入社前に会社に申告した経歴に偽りがあった

 D督促しても必要書類を提出しない

 E健康状態が悪く、今後の業務に耐えられない

 F第○条に定める解雇事由、または懲戒解雇事由に該当する

5.試用期間は勤続年数に通算する。

 

 最後に余談ですが、試用期間中であっても、雇用保険、健康保険、厚生年金保険は加入しなければいけませんので、ご注意ください。

 「試用期間中の契約書」、「就業規則」の様式については当事務所にご相談ください。

 

事業主のための就業規則 労働時間・休憩編

 私が就業規則を作成する上で、一番悩むのは労働時間のところです。

それはなぜか。

それぞれの事業所によって実際の労働時間がありますが、その労働時間が法律の範囲内の労働時間にできるだけ収まるように制度化し、残業時間をへらす工夫が必要だからです。

 労働基準法第32条により、労働時間は1日8時間、1週間40時間というのが原則です。ただ、1週間を平均して40時間にすればいいという、「変形労働時間制」がありますので、1か月単位がいいのか、1年単位がいいのか、業種によっては1週間単位がいいのかなどよく考慮して作成することになります。また、10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業は、1週間44時間以内なら法定労働時間になるという特例もありますので、どの業種で従業員が何人いるかによって制度設計が変わってきます。

 変形労働時間制を採用するにあたり、以下のような条件がありますので、参考にしてください。

 

「1か月単位の変形労働時間制」

 ・労使協定または就業規則などにより定めて、監督署に届け出る

 ・期間は1カ月以内とし、起算日を決める

 ・期間内の総労働時間が、法定労働時間の総枠内である(30日の場合は171.4時間以内など)

 ・変形期間内の各日の労働時間、始業・終業時刻を決める

 

「1年単位の変形労働時間制」

 ・労使協定で定めて、監督署に届け出る

 ・対象労働者の範囲を決める

 ・対象期間(1か月を超え、1年以内)を決める

 ・対象期間を平均して1週間40時間をこえない範囲内で、かつ変形期間における労働日、労働時間を特定する。

 ・所定労働日数は、1年で280日以内である

 ・1週間48時間を超える所定労働時間が連続3週間以内である

 ・起算日から3カ月ごとに区切った1期間に、48時間を超える週の初日が3日以内である

 ・1日10時間以内である

 ・1週間52時間以内である

 ・協定の有効期間を決める

 

「1週間単位の変形労働時間制」

 ・30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店である

 ・労使協定を締結し、監督署に届け出る

 ・1週間40時間以内にする(10人未満の特例はなし)

 ・1日10時間以内とする

 ・前週末までに事前に書面で労働時間を通知する

 

 次に、休憩時間について説明します。

労働基準法第34条で「労働時間が6時間を超えると少なくとも45分、8時間を超えると少なくとも60分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定されています。要するに、8時間労働で休憩は45分間でも法律違反ではありませんが、今まで事業所の慣習として1時間の休憩があったのに、就業規則を作成した途端、休憩が45分になってしまったというのは良くないことで、従業員のモラルの低下につながり、トラブルのもとになり兼ねないです。今までの慣習や他の事業所と比較しながらルール化して頂きたいと思います。

 それから、休憩時間は一斉に与えなければならないという規定もあります。ただし、特例として以下に揚げる業種については一斉に与えなくてもいいとされています。

 ・運輸交通業(鉄道やバス、船などの旅客、運送業など)

 ・商業(小売業、リース業、美容院など)

 ・金融広告業(銀行、保険会社、広告業など)

 ・映画、演劇業(映画の製作や演劇業など)

 ・通信業(郵便や通信事業)

 ・保健衛生業(病院、診療所、介護事業など)

 ・接客娯楽業(旅館、料理店、飲食店など)

 ・官公署(行政官庁など)

上記以外の事業所の場合は、労使協定で定めた場合のみ一斉に休憩を与えなくても良くなりますので、ご注意ください。

 

 労働時間・休憩時間に関するモデル規定は以下の通りです。

(労働時間および休憩時間)

第○条 所定労働時間は、休憩時間を除き、1週間は40時間、1日は8時間とする。

 2 所定労働時間の始業・終業時刻、休憩時間は以下の通りとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これを繰り上げ、または繰り下げることがある。

  始業時刻  午前9時

  終業時刻  午後6時

  休憩時間  正午から午後1時まで

 3 休憩時間は原則として一斉付与とするが、労使協定で定めた場合は交替制もしくは時間の変更を行う。

 4 従業員は休憩時間を自由に利用できる。ただし、外出する場合はその旨を所属長に事前に届けなければならない。

 

事業主のための就業規則 有給休暇編

 就業規則を作りたくないと言われる事業主さんに理由をお伺いすると、

有給休暇がとれることを従業員に知られたくないから

と言われる方がいます。確かに有給休暇を取られると中小企業の事業所としては大変ですが、有給休暇は労働者の権利として存在していますので、就業規則に載せなくても、請求されれば取得させなければいけません。それに、今はインターネットで調べればすぐに有給休暇が何日とれるかなどは分かってしまいます。

 それよりも、就業規則で有給休暇についてどのような手続きを取らないと取得できないのかルールづくりをして、気持ちよく働ける事業所にした方が事業主のためになるのではないでしょうか。

 就業規則の有給休暇の条文の中に、記載した方がいいものは以下の通りです。

1.事前届け出制にする

 特別な理由がない場合は事前に「有給休暇取得願」を提出しなければいけないと明記してください。これによって、前日の帰社時間に「あすから有給で休みます」ということが出来なくなります。また、何日前までに提出させるのが合理的かといいますと、裁判例(電電公社此花電報電話局事件)である通り、2日前までに届け出るというのが合理的な期間とされています。

 ただ、もっと前から分かっている予定なら、できるだけ早く届け出るように規定の中にいれるのもいいでしょう。

2.手続きを期間内に行っても、業務の関係で希望する時期に取れない場合があることを明記する

 とても忙しい時期に2日前に休みたいと言われても困ってしまう場合があります。その様な時は、時季を変更してもらうこともあると明記しておけばトラブル防止になります。また、事前に忙しい時期を特定しておき、事業所内で出来るだけ休まないように指導するようにしましょう。

3.計画年休を入れる

 有給休暇のうち5日を超える日数については、あらかじめ労使協定を結んでおくと、事業所が指定した日に有給休暇を与えることができます。これを「計画年休」と言います。年末年始やゴールデンウィーク、夏季休暇などの長い休みを計画年休の日数に入れてしまえば、有給休暇が自然に消化できてしまいます。

4.有給休暇の消化は新しい年のものからにする

 有給休暇の権利は2年で消滅しますので、前年の有給休暇の未消化分は今年も取得できます。そのため、前年から全然取得しなかった場合は、最高40日の有給休暇が取得できます。それを新しい年の有給休暇から消化するようにすれば、前年の未消化分は時効によって消滅していきますので、来年になれば40日も有給休暇が未消化であることはなくなります。そのため、病気などで長期休業する場合には、有給日数は減っているので賃金支払いは少なくて済みます。

 

以上のようなこと参考にした就業規則の規定例は以下の通りです。

(年次有給休暇)

 採用の日から6カ月継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した従業員に対して、6カ月を超えた日に10労働日の年次有給休暇を与える。

2.前項以降の付与日数は以下の通りとする。

  (表 省略)

 3.従業員は、年次有給休暇を取得しようとするときは、やむを得ない事由を除き、少なくとも2日前までに所定の手続きにより届けなければならない。ただし、事前に有給休暇を取得する指定日が確定している場合は、出来るだけ早く所定の手続きにより届けなければならない。

4.前項の場合において、会社は業務の都合によりやむを得ない場合は、指定した日を変更することがある。

5.3日以上連続して有給休暇を取得しようとするときは、休暇日の少なくとも2週間前に所属長に申し出て、休暇中の引き継ぎや業務連絡を行い、業務に支障がないようにしなければならない。

6.会社は、従業員代表との書面による協定により、各従業員の有する年次有給休暇のうち5日を超える日数について、あらかじめ時季を指定して与えることがある。

7.発生後1年以内に使用できなかった年次有給休暇は、翌年に限り繰り越すことができる。

8.繰り越された年次有給休暇と、新しく付与された年次有給休暇がある場合は、新しく付与されたものから順次消化していくものとする。

 

 有給休暇の取得方法などをルール化して、従業員に義務を果たしてもらって、有給休暇という権利を取得するように指導してください。

 

有給休暇を計画的に与えましょう

 年次有給休暇は、労働者を雇入れた日から6か月経過後から権利が発生します。正社員で10日、パートで、所定労働日数にもよりますが、1日から10日の間で取得できる権利があります。事業所の規模にもよりますが、一度に労働者が有給休暇を取得して業務に支障をきたしてしまうこともあります。そのようなことを避けるためにも、有給休暇を計画的に与えるようにしてはどうでしょうか。

 この制度は労働者にとってもメリットがあります。労働者の意見としては、前もって計画的に決められているので予定が立てやすい、気兼ねなく有給休暇が取れる等です。

 また、事業主にとってもメリットはあります。有給休暇を計画的に取得してもらうことで、心身共に健康を維持できるし、仕事に対する集中力もでき、生産性を向上することにつながると思われます。

 

 それでは、年次有給休暇を計画的に与えるにはどうすればいいでしょうか。

1.年次有給休暇の日数のうち、5日を超える部分について与えることができる。

 例えば、年次有給休暇の日数が10日ある人に対しては5日、20日ある人に対しては15日まで計画的に与えることができます。

 尚、前年に取得されず繰り越された日数がある場合は、その繰り越された日数も含めて5日を超える部分を計画的に付与することができます。

 例)前年10日、今年12日年次有給休暇が取得できる場合 22日−5日=17日が対象になる

 

2.労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との労使協定を結ぶ。

 計画的付与は事業所の実情にあわせて以下のような方法で活用できます。

 @企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式

 企業、事業場を一斉に休みにして同一の日に有給休暇を与える方法です。製造業などで多く見られる方法で、お盆、年末年始、ゴールデンウィークなどの祝日の合間を有給休暇とすることで連続休暇にもできます。

 A班、グループ別の交替制による付与方式

 企業、事業場で一斉に休みを取ることが難しい流通、サービス業などでは、班、グループ別に交替で有給休暇を付与する方法です。

 B計画表による個人別付与方式

 企業、事業場で一斉に休みを取ることが難しい流通、サービス業などでは、上記A以外に個人別に交替で有給休暇を付与する方法です。誕生日や記念日、子供の行事などを優先的に取得できるようにするケースもあります。

 

3.労使協定には次のような事項を定めて、有給休暇の取得日より前に締結する。

 @事業場全体の一斉付与の場合、具体的な有給付与日を協定する。

 A班別、グループ別による交替付与の場合、班別、グループ別に具体的な有給付与日を協定する。

 B計画表による個人別付与の場合、計画表を作成する時期、手続き等について協定し、具体的な有給付与日はその計画表で決まるようにする。

 

 労使協定の具体例は以下の通りです。

 

・個人別付与方式

 

年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定例 

 

〇〇株式会社と同社従業員代表〇〇とは、標記に関して次のとおり協定する。

1 当社の従業員が保有する平成〇年の年次有給休暇(以下「年休」という)のうち、5日を超える部分について5日を限度として計画的に付与するものとする。

2 年休の計画的付与の期間は、7月1日から9月31日までとする。

3 従業員は5月31日までに、所属長に対し、期間中において年休の取得を希望する日を申し出るものとする。

4 各所属長は、所属従業員の年休取得希望日が特定の日に集中し、業務の正常な運営に支障を与えるおそれがあると認められた場合には、従業員に対して希望日の変更を求めることができる。各所属長は、希望日の変更を求める場合は6月10日までに従業員にその旨通知するものとする。

5 本年の年休の日数から5日を控除した日数が5日に満たない従業員に対しては、その不足する日数の限度で、第2項の期間中に特別有給休暇を与える。

6 各所属長は、所属従業員の年次有給休暇表を作成し、従業員に提示するものとする。

平成〇年〇月〇日

                           〇〇株式会社

                            代表取締役 〇〇〇〇

                            従業員代表 〇〇〇〇

 

 当事務所では、年次有給休暇の一斉付与についてご相談を承りますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

事業主のための就業規則 休職期間編

 休職期間というのは、事業所が労働者に与えなければならない期間ではないので、就業規則で定めなくてもかまいません。いまから就業規則を作成する事業所で、今まで休職をした労働者がいない事業所なら、休職期間がない就業規則を作成することをお勧めします。

 それはなぜか。

 休職する理由は様々ですが、少なくとも何ヶ月間は労働を提供できない期間ということですから、それを事業主の方から休職できる期間を設けることはしなくていいのです。労働ができないのであれば、退職していただくことです。

 それに、社会保険に加入している人が休業してしまったら、その期間の社会保険料の事業主負担分は支払い続けなければいけません。社会保険料を負担し続けたのに、結局復帰できずに退職してしまうケースも多々あります。

 そのような理由で、当事務所では休職期間を設けない就業規則を作成するようにしています。

 ただ、もうすでに休職期間の定めのある就業規則がある場合や、今までに休職したことがある場合は、そういう訳にはいきません。今ある就業規則や社内ルールの内容をよく吟味して、今後休職者が出てしまったときに、しっかり対応できる就業規則や社内ルールにすることをお勧めします。

 最近特に問題になるのが、メンタルヘルス不調による休職です。今までこのような病気が少なかったため、(顕在化しなかったため)今までの規定では対応できないという事業所が多くなっています。メンタルヘルス不調になった場合、まず本人が病気であるという自覚がない場合があったり、家族の理解が得られない場合があります。

そのような人をどのようにして休職してもらうようにするか、ルール化することが大事です。また、何度も休職を繰り返したり、病状が回復しているように思えないのに職場復帰してきたりする場合もあります。そのような場合にどのように対応していくのか、事業所としてしっかり考えておく必要があります。

 

 そのようなためにも、休職規定を以下のようなポイントに注意して見直していきましょう。

1.連続した欠勤でなくても欠勤が何日以上になると休職してもらえる制度にする。

2.休職期間中に傷病が治りそうにない場合は最初から解雇できるようにしておく。

3.休職期間は1か月単位では端数の問題が出てくるので、通算何日以内というようにしておく。

4.復職してから数カ月でまた休職してしまうケースに対応して、休職期間が通算できる仕組みにする。

5.復職判断は会社が指定医の意見をもとに行うようにする。

6.元通りの職務が出来ない場合に、労働時間や給与面で不利益変更ができるようにしておく。

7.休職期間満了の場合は、解雇ではなく自然退職としておく。

 

 事業主のための休職規定の条文は以下の通りです。

(休職事由)

 会社は、従業員が以下の各号に該当する場合は、従業員の申し出または会社の指示により休職を命ずる

 @勤続1年以上の従業員が業務外の傷病によって欠勤が3カ月以内に通算30労働日以上になったとき

 A刑事事件で起訴されたとき

 B業務命令により他事業に出向したとき

 C前各号のほか会社が必要と認めたとき

2.前項@号については、会社が指定する医療機関で診断することを命ずることがある。

3.休職事由が業務外の傷病を原因とする場合において、当該傷病が休職期間中の療養によって従前の労務提供ができる程度に回復する見込みが低いと認められた場合は、休職を命ずることなく、普通解雇とすることとがある。

(休職期間)

 休職期間は次のとおりとする。

 @前条第1項@の場合 勤続1年以上3年未満の者 180暦日以内

                 勤続3年以上の者      360暦日以内

 A前条第1項Aの場合 判決が確定するまでの期間

 B前条第1項Bの場合 出向する期間

 C前条第1項Cの場合 会社が必要と認めた期間

2.復職後、6カ月以内に同一または類似の傷病により再び欠勤するに至った場合、従前の休職期間と通算する。

3.休職期間中の賃金は支給しない。

4.休職期間は勤続年数に算入しない。ただし、前条第1項Bの休職は勤続年数に算入する。

5.傷病による休職者は、休職期間中は療養に専念しなければならない。

6.会社は一定期間ごとに休職者から報告を求めることができる。

(復職)

 傷病による休職者が復職する場合、医師による復職可の診断書を添付して、復職の申し出を行わなければならない。

2.会社は、原則として休職者を会社の指定する医師へ受診させ、この診断をもとに復帰の当否を決定する。この場合、従業員は正当な理由なく、この受診を拒否することはできない。

3.休職の事由が消滅したときは、原則として休職前の職務に復帰させる。ただし、業務の都合もしくは当該従業員の状況に応じて、異なる職務、異なる職場に配置することがある。この場合、本人との協議のうえ、労働条件の変更を伴う可能性がある。

4.復職前に本人との協議のうえ、一定期間、通勤訓練を行うことがある。この場合は通勤手当のみ支給する。

5.復職後に一定期間、リハビリ勤務を行うことがある。この場合は、本人との協議のうえ、労働時間や賃金等労働条件を変更することがある。

(休職期間満了時の手続き)

 休職期間満了時までに休職事由が消滅しない場合は、休職期間満了をもって自然退職とする。

 

事業主のための就業規則 服務規律編

 事業主のための就業規則を作成する上で、重要な規定は服務規定です。就業規則というのは、その事業所のルールであり、守るべきものでありますが、その中でも服務規定は、「このような働き方をしてほしい」「こんなことはしてはいけない」と従業員に対するメッセージを発信できるところなのです。言い換えれば、この服務規定を読めば、わが社の従業員としてのあるべき姿がわかるというようなものなのです。

 それ故に、厚生労働省のモデル規定をそのまま使用することはやめて、自社にあった服務規定を作成していただきたいと思います。

 また、その服務規定を作成しただけに留まらず、きちんと内容を従業員に説明していき、従業員教育に役立てていただきたいと思います。そのことによって、事業主さまの考えに沿った従業員が育っていくことになり、無用な労務トラブルを防ぐことになります。

 服務規定の内容は、従業員が見てすぐ理解できるような簡単な表現で、具体的なものにすることが重要です。以下にモデル規定を記載しますが、各事業所の実態によく合った内容に作成し直してください。

 

第○条 従業員は以下の事項を守らなければならない。

 1.常に健康に留意し、明朗はつらつたる態度をもって就業すること

 2.職場の整理整頓に努め、清潔を保つようにすること

 3.使用者および上司の指示に従い、誠実、正確かつ迅速に職務を行うこと

 4.業務上の失敗、ミス、クレームは速やかに上司に報告すること

 5.始業時刻および休憩終了時刻にはすぐに業務に取り掛かれるようにすること

 6.上司、同僚、部下と互いに協力して職務を遂行するとともに、協調性をもって職場の秩序を保つこと

 7.セクハラ、パワハラまたはこれに類する行為を行わないこと

 8.住所、家族関係、経歴、通勤手段等使用者に申告すべき事項について偽らないこと

 9.使用者の許可なく、営業上の秘密の情報を事業場外に持ち出さないこと

 10.会社所有のパソコンなどを使用し、私的な目的のメール送受信やホームページ閲覧しないこと

 11.インターネット上の書き込み、新聞・雑誌などへの投稿、ラジオやテレビへの出演において、会社および会社の従業員、または取引先等を誹謗中傷するような言動、会社の秘密を察知されるような言動をしないこと

(以下省略)

 

 最近は特にフェイスブックやツィッターなどで会社のことや会社の従業員のことを書き込んだりすることが増えていますので、事業主としてはそれに対する防護策を取らなければならない時代です。

 また、上記のような規定に違反したときは、なぜしてはいけないのか説明して改善を促し、それでも改善しない場合は、懲戒規定により対応していくことが必要です。

 

能力不足の従業員を指導していく規定

 採用した従業員の能力が低くて業務が進まない、うまくいかない場合、どうしていますか。「すぐに解雇している」という事業所は危険です。裁判例(セガ・エンタープライゼス事件H11.10.15)を見ても、「平均的な水準に達していないというだけでは不十分で、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込がないときでなければ解雇は無効である」と判断していて、事業主にとっては非常に厳しいです。

 

 能力不足の従業員がいる場合は、しっかりと教育して能力を向上してもらうよう努力して下さい。その後、事業所が指導、教育を尽くしたにも拘らず能力の改善が見られない場合にどうするか考えていきます。その場合でも、事業所の規模や業種、事業所における異動の実情や難易度に照らし合わせて、他の業務への転換や職場の異動が可能か考慮しなければいけません。小規模事業所で、他の業務や他の職場がない場合は解雇もやむを得ないかもしれませんが、解雇は最終手段であることを覚えておいてください。

 

 当事務所では、能力不足の従業員を指導していく方法を明確にするために、社内規定を作ることを提案します。

 

 また、従業員に指導する内容や教育方法を「指導書」として交付することをお勧めします。指導書には以下のことを記載します。

 1.求められる能力の程度

 2.現在の能力の程度

 3.今後の指導、教育内容

 

 次に、指導書に記載された方法で指導、教育を行ってください。指導、教育した内容が分かる資料を必ず書面で残すようにして下さい。例えば、指導した内容を記載した業務日報や従業員との面談記録、従業員の始末書や経過報告書、業務報告のメール、クレーム報告書等があります。

 

 指導書に記載された方法が終わった後に、現在の能力評価を行ってください。実際の指導に当たった直属の上司や一緒に業務を行っている同僚や部下からも話を聴いて改善されているか検討して下さい。

 その後、本人と現在の状況について面接をして下さい。まだまだ改善されていないようであれば、もう一度「指導書」を交付して繰り返し指導していきます。

 

 業務指導規定のモデルは以下の通りです。

 

第○条 会社は従業員の能力不足を改善するために、指導、教育を行う。

  2 指導、教育内容は「指導書」に記載した方法により行う。

  3 「指導書」を交付するときは必ず対象従業員と面談形式で行い、その記録を文書化する。

  4 指導、教育を行う者は必ず指導内容を記載した日報を作成する。

  5 対象従業員は、指導を受けた内容を記載した経過報告書を作成する。

  6 その他、指導、教育内容についてできるだけ文書かメールで記録する。

  7 「指導書」で記載した方法、期間の指導、教育が終了した場合、能力評価を行う。

  8 能力評価の結果を対象従業員に、面談で文書で報告する。

  9 改善が見られない場合は、再度「指導書」を発行する。

  10複数回「指導書」を発行しても改善が見られない場合は、他の職種または他の職場への異動を検討する。または、労働条件の変更を申し出て、同意を得られた場合は労働条件の変更を行う。

 

 当事務所では、業務指導規定の作成や「指導書」についてご相談を承りますので、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

事業主のための就業規則 懲戒編

 事業所でこんなことはありませんか。

 ・従業員が何度注意しても遅刻してくる

 ・勤務中にインターネットで仕事に関係ないページを閲覧している

 ・勤務時間中にいなくなってしまう

 ・タイムカードの打刻を正確にしない

 ・無断欠勤をする

 ・事業所内で窃盗、暴行、脅迫など犯罪行為を行う

 ・飲酒運転で事故を起こす

 ・業務上の秘密を外部に漏らす

  など

 このような行為が起こったとしたら、事業所として従業員をそのままにしておくことは良くありません。企業の秩序を維持するために、使用者には懲戒権が認められています。事業主としては、そこで働く従業員全員が気持ちよく働くことができるような職場にしていくためにも、問題を起こした従業員には指導をしていくことが必要であり、規則を守れない者には懲戒処分を下すことが大切です。

 ただし、事業主が懲戒権を行使するにあたって、注意すべき点があります。労働契約法に「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質および態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。」と規定されています。そのため、権利の濫用にならないために次のことについて注意しなければいけません。

 

 1.就業規則に、該当する懲戒事由が記載されていること

  前記した「従業員が何度注意しても遅刻してくる」というような事由について、懲戒処分をする場合、就業規則の懲戒規定の中にその事由が記載されていなければいけません。ただし、例外的に「明らかに企業秩序を乱し、企業目的遂行に害を及ぼす労働者の行為に対しては、準拠すべき明示の規範のない場合でも懲戒処分ができる(昭和26.7.18東京地裁)」とあります。

 

 2.就業規則に定められた処分の種類であること

  就業規則の懲戒規定の中で処分の種類を明記していなければいけません。種類として挙げられるのは、主に以下の通りです。

 

懲戒の種類     内     容
訓告 文書によって厳重注をし、将来を戒める
けん責 始末書を提出させ、将来を戒める
減給 1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が1賃金支払期の賃金総額の10分の1以内で減給する
出勤停止 出勤停止を命じ、この期間の賃金を支払わない
降格 資格等級の引き下げや役職の引き下げ
諭旨退職 合意退職に応じるよう勧告する
懲戒解雇 解雇予告期間なしに即時解雇する

 

 3.行為と処分が均衡していること

  従業員が行った困った行為に対して、懲戒処分が適当であることが必要です。軽い行為に対して重い処分を課すことは良くないことです。ただ、その処分が妥当であるかどうかの最終判断は裁判所で争うことになります。

  また、以前に同じような行為をした従業員にはけん責処分だったのに、別の従業員には減給の処分になったというような、人によって処分が変わるような不均衡な対応も良くありません。ただし、一般従業員と管理職が同じ行為をした場合に、管理職のほうが重い処分になるのは、責任の程度により合理的であれば妥当である可能性もあります。

 

 4.就業規則等で規定された処分手続きを守ること

  懲戒処分は従業員にとって不利益なものであるから、その手続きが就業規則等で規定されているのなら、必ずその手続きを取らなければいけません。例えば、「懲戒処分を決定するには役員が集まって事実確認、本人の意見徴収を行った上で検討し決定する。」という規定があれば、必ずその手続きを行ってから処分を決定しなければ、処分が無効になることもあります。また、重い処分を課す場合は、本人の弁明の機会を与えることも必要です。

 

 5.二重処分の禁止

  1つの違反行為に対して二重の処分をすることは禁止されています。例えば、業務命令に従わないことに対して、けん責処分をした後で、同一の事案について減給することはいけないということです。しかし、業務命令に従わないことに対して1回目けん責処分を課し、その後また業務命令に従わなかった場合に今度は減給処分を課すのは構いません。

 

 6.不遡及の原則

  懲戒処分を課す場合、就業規則にその内容が制定された日以降の事案についてしか適用されないということです。平成27年4月1日施行の就業規則については平成27年3月中の事案について処分は出来ないということです。ただし、制定された日(施行日)をさかのぼった日付にして、処分するのも無効です。

 

 以上のようなことを守った上で、適切な懲戒処分を行うためにも就業規則に規定を設けるようにしましょう。懲戒規定の作成方法としては、どのような事をしたらどのような懲戒を受けるのかできるだけ列挙するようにします。ただ、厚生労働省のモデル様式のような「軽微な」「しばしば」「著しく」「重大な」などの文言は使用しないほうがいいと思います。実際の処分を決定するときに、何が軽微で何が重大なのか不明で決定できないということになるからです。

 

 懲戒規定のモデルは以下の通りです。

 

第○条(懲戒の種類と懲戒事由の適用)
 懲戒事由は、以下のとおりとし、情状に応じ、訓戒、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨退職、懲戒解雇に処する。
@ 無断もしくは正当な理由なく欠勤、遅刻、早退を重ねたとき
A 出退勤時刻にかかる情報の不正をしたり、不正を依頼した場合
B 第○章に定める服務の規定に違反した場合
C 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき
D 刑事事件で有罪の判決を受けたとき
E 経歴を偽り、採用されたとき
F 故意または過失により、災害または営業上の事故を発生させ、使用者に損害を与えたとき
G 使用者の許可を受けず、在籍のまま他の事業の経営に参加したりまたは労務に服し、もしくは事業を営むとき
H 職務上の地位を利用し、第三者から報酬を受け、若しくはもてなしをうける等、自己の利益を図ったとき
I 使用者の許可なく業務上金品等の贈与を受けたとき
J 暴行、脅迫その他不法行為をして、所属する組織の従業員としての体面を汚したとき
K 正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかったとき
L 私生活上の法違反行為や使用者に対する誹謗中傷等によって使用者の名誉信用を傷つけ、業務に悪影響を及ぼすような行為があったとき
M 使用者の業務上の秘密を外部に漏洩して使用者に損害を与え、または業務の正常な運営を阻害したとき
N その他前各号に準ずる程度の不都合な行為のあったとき

 

 

 

 

 

事業主のための就業規則 退職編

 労働者が退職するのはどんなときか、就業規則で明白にしておかないと、これがトラブルの原因になることがあります。労働者本人の方から退職願いを提出した場合や死亡してしまった場合においては、退職に対して異議をとなえる者はいませんが、例えば、無断欠勤が続いて本人と連絡がとれない場合はどうすればいいのでしょうか。事業主としては、本人が出勤してこないので退職したものとみなして、退職の手続きをしてしまった後に、本人が急に出勤してきて、「退職する意思はない。これは解雇だ。」と騒ぎ始めるケースがあります。このようなケースにも対応できるように、あらかじめ就業規則の中で、「無断欠勤が継続して2週間をすぎれば退職とする。」というような規定を作成しておき、入社時や研修時などに説明しておく必要があります。

 また、最近特に多いのが、病気休業により休職期間が満了してしまった場合、どのようにすればいいかが問題になります。よくある就業規則では、「休職期間が満了して復職できない場合は解雇とする」となっていますが、事業主さまのためには、「休職期間が満了して復職できない場合は自然退職とする」としたほうがいいです。なぜなら、もともと休職期間というのは仕事ができない状態なので、本来は退職してもらわないといけないが、急に退職するのは気の毒であるので一定期間猶予をあげますから、その間にもとの状態にもどして早く復帰してほしい、という気持ちをこめた福利厚生の期間です。法律的に与えなければならない期間ではないですし、休業中の社会保険料の負担もあり、中小企業にとってはとても大変な期間です。当事務所で初めて就業規則を作成する場合は、できるだけ休職期間がないものを作成するくらいです。そのようなことからも、助成金の申請ができなくなってしまう「解雇」規定にするのではなく、「自然退職」規定にするのが良い方法です。

 それから、退職に関する手続きについても、就業規則で定めておくようにしましょう。「今日で退職します」と言っていきなり辞めてしまう人もいますが、これは事業主にとっては大変迷惑な話です。せめて1カ月ぐらい前には退職願いを提出してもらって、業務の引き継ぎをしてもらいたいと思うのが本心でしょう。また、会社の備品や機密事項を持ち出さないように必ず返還させるような規定も盛り込むべきではないでしょうか。

 

 以上のようなことを盛り込んだ就業規則の規定例は以下の通りです。

 

(退職)

 従業員が次の各号の一に該当した場合は、その日を退職の日とする。

 @死亡したとき

 A自己の都合により退職を願い出て、使用者と合意したとき

 B休職期間が満了し、復職できないとき

 C会社に届け出のない欠勤が欠勤開始日から14暦日経過したとき

 D期間を定めて雇用されていた者が、契約期間が満了したとき

 E会社の役員に就任ししたとき

 

(退職の手続き)

 従業員が自己の都合で退職する場合は、少なくとも1カ月前には退職願いを提出しなければならない。

2.退職する者は、退職する日まで従前の業務に専念するとともに、業務の引き継ぎを完全に行わなければならない。

3.退職する者は、自分が利用した電子メールの履歴、パソコンのデータ、業務記録など業務に関連する記録全てを会社の許可なく削除してはならない。また、会社の備品、業務上知りえた情報その他業務に関連する一切の物を持ち出してはならない。

4.退職した者は、会社からの借入金、借入品、健康保険証などを、1週間以内に返還しなければならない。

 

事業主のための就業規則 定年編

 平成25年4月より高年齢雇用安定法が改正され、60歳の定年を定めている事業所が労使協定で定める基準に達した者のみ継続雇用出来るという制度が廃止されました。ただし、厚生年金の支給開始年齢に達した者については、それ以降は労使協定で定めた基準を引き続き利用できる特例措置が設けられました。

 この厚生年金の支給開始年齢というのは、厚生年金を1年以上加入していた人が65歳になる前に報酬によって支給される年齢のことで、男性の場合、昭和28年4月2日から昭和30年4月1日生まれの人は61歳となります。(その後生年月日により年齢が変更する)女性の場合は、同じ昭和28年4月2日生まれでも厚生年金の報酬比例部分は60歳時に支給されますが、性別によって定年の取り扱いを変えるのは法律違反になりますので、女性においても定年後の継続雇用制度は同様の規定になります。

 この法律改正に伴って、就業規則の定年の規定を変更しなければならない事業所があります。それは、「定年は満60歳とする。ただし、労使協定で定めた基準に達した者については65歳まで継続雇用する。」というような規定になっている事業所です。就業規則の変更をせずに、60歳に到達した者が労使協定で定めた基準に達しないために退職とした場合、法律違反になってしまい、労働者とトラブルになる可能性がありますので、早急に変更して頂きたいと思います。

 ただ、この法律改正は65歳まで雇用することを義務化したものではないため、支給開始年齢に達した後の労働条件の変更は認められますし、労働条件に合意できない場合は退職となることに問題はありません。また、1年ごとの期間の定めのある契約とし、更新条件を個別の労働契約書で定め、契約期間満了時に更新条件が満たされない場合は退職してもらうことも可能です。このような運用をするためにも、就業規則の変更をお勧めします。

 

 以上のような内容を盛り込んだ就業規則の規定例は以下のとおりです。

(定年)

 従業員の定年は満60歳とし、定年に達した日以降の月末をもって退職とする。

2.定年に達する従業員が、定年日の3カ月前までに継続雇用を希望し、就業規則第○条の解雇事由または退職事由に該当しない者であって、継続雇用制度と選定基準に関する協定書の基準のいずれにも該当する者については、嘱託として満65歳まで継続雇用する。なお、選定基準のいずれかを満たさない者については、次に示す特例期間について上限期間を設け、嘱託としてその上限期間に達する日まで継続雇用する。

<特例期間>                        <上限年齢>

 @平成25年4月1日から平成28年3月31日まで    61歳

 A平成28年4月1日から平成31年3月31日まで    62歳

 B平成31年4月1日から平成34年3月31日まで    63歳

 C平成34年4月1日から平成37年3月31日まで    64歳

3.嘱託として再雇用する場合は、個別の労働条件により労働契約を締結する。

4.労働契約期間は1年以内とし、更新の条件については労働契約書で規定する。

 

 

 

事業主のための就業規則 普通解雇編

 解雇とは、事業所が一方的に労働契約を解除することで、従業員にとっては大きなショックを受けるものです。解雇という方法が妥当であるかどうか、争われるケースが多いので、事業主さまにとっては慎重に対応すべき事項になります。

 

 以下解雇について注意すべき点を挙げます。

 @解雇事由が就業規則に記載されている

  解雇については就業規則に記載しなければならない事項になるため、どのような場合に解雇になるか列挙しておく必要があります。できるだけ例を挙げ、最後に「その他やむを得ない事由が生じた場合」と記載しておきましょう。

 

 A法律上解雇が禁止されている事由に該当しない

  解雇禁止の事項は次のようなものがあります。

 ・労働組合員であること、または正当な組合活動を行ったことなどを理由とする解雇

 ・業務上の負傷・病気などによる休業、産前産後休業、およびその後30日間の解雇

 ・妊娠・出産・育児休業、介護休業を理由とする解雇

 ・労働者の国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇

 ・公益通報したこと、監督署へ申告したことによる解雇 など

 

 B解雇事由に合理性がある

  「解雇は、客観的に合理的に理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と労働契約法で規定されています。

 客観的に合理的な理由とは以下のことから判断されます。

  1)解雇理由とされた行為が事実であるか

  2)その事実が証拠や証言によって第3者からみても分かるか

  3)就業規則の解雇事由に該当し、解雇されても止むを得ない理由か

 上記のような理由に該当する例は以下の通りです。

  1)労働ができない、とても難しい、不安定である

  2)労働能力や技術が著しく欠如している

  3)協調性の欠如、勤務態度が著しく悪い

  4)重大な職務違反、業務命令違反、守秘義務違反等

  5)会社の名誉、信頼を失墜させる

  6)重大な違法行為、痴漢、窃盗、飲酒運転死傷事故、セクハラ等

  7)経営上必要なとき(業務縮小、事業の廃止など)

 

 社会通念上相当であるとは、以下のことから判断されます。

  1)解雇理由につき、事業者が適切な指導、注意、監督を行ったか

  2)配置転換や懲戒処分など行い、改善しようと努力したか

  3)以前に行った関連違反者に対する処分と比較して、妥当であるか

  4)経営上の理由の場合は、従業員に説明したか

 

 解雇する場合、今まで記載したようなことをクリアしていかないと、不当解雇として訴えられることがありますので、安易に解雇にするのではなく、法律の専門家とよく相談しながら解決策を見つけていただきたいと思います。

 当事務所は「特定社会保険労務士」の免許も取得していますので、解雇に関する相談にも対応しています。お気軽にご相談ください。

 

 解雇には、普通解雇と懲戒解雇の2種類がありますが、一般的によく行われるのは普通解雇なので、普通解雇について規定例を記載します。

(普通解雇)

 従業員は次の各号の事由により解雇されることがある。

 @身体、精神の障害、その他法令で保護されない私的な事情等により、本来遂行すべき業務への完全な労務提供ができず、または業務遂行に耐えれないと使用者が認めたとき

 A能力不足、勤務不良により改善の見込みがないと使用者が認めたとき

 B規律性、協調性、責任性を欠くため、他の従業員に悪影響を及ぼすと使用者が認めたとき

 C試用期間中、または試用期間満了時までに、本採用することが不適当であると使用者が認めたとき

 Dその他従業員として適格性がないと使用者が認めたとき

 E事業の縮小等、その他やむを得ない業務の都合により必要があるとき

 F事業の廃止、天災事変その他、これに準ずるやむを得ない事情により事業の継続が困難になったとき

 Gその他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき

2.解雇するときは30日暦日前に予告する。予告しないときは平均賃金の30日分を支給して即時解雇とする。なお、予告日数は、平均賃金を支払った日数だけ短縮する。

3.第1項で定める事由により解雇される者より退職理由証明書の請求があった場合は、使用者は解雇理由証明書を交付する。

 

 

 

事業主のための就業規則 パワハラ、セクハラ編

 最近、労働相談で増加しているのが「上司にいじめられた、嫌がらせを受けた」などパワハラに関するものです。そして、その相談の延長線上にあるのが裁判で訴えるということです。万が一、裁判で労働者から訴えられた場合、事業所としては大変大きな損害を被ります。多額の損害賠償を請求されるだけでなく、事業所の信用や名誉が傷つけられ、事業が上手くいかなくなる可能性があります。

 これは、セクハラに関しても全く同じことが言えます。セクハラによる裁判もパワハラと同様、事業所に大きな打撃を与えます。

 それでは、パワハラ、セクハラをしないような職場にするために、事業所は何をすればいいのでしょうか。それは、「従業員教育」です。パワハラやセクハラは絶対してはいけないものであるということを全従業員に対して啓発していき、認識させることです。

 従業員にパワハラ、セクハラに対する事業所としての考え方を周知する方法として、就業規則の服務規程の中にパワハラ、セクハラ禁止事項を盛り込むことです。パワハラとはどんなことなのか、セクハラとはどんなことなのか具体的な行動等を示して、就業規則の禁止事項にします。そして、禁止事項を行ってしまった従業員に対しては、厳しく処罰する規定にしておくことです。

 そして、必ず就業規則の内容について説明会を開き、説明するようにして下さい。

 

 また、従業員に対して「パワハラ、セクハラ研修」を行うようにして下さい。どんなことがパワハラになるのか、どんなことがセクハラになるのか、具体例を説明するだけでも、抑止力になると思います。

 当事務所では、「パワハラ研修」や「セクハラ研修」を行っています。お気軽にお問い合わせ下さい。

 

 パワハラ、セクハラ防止規定は以下の通りです。

 

第〇条  全ての従業員は勤務にあたり、パワハラ、セクハラまたはパワハラ、セクハラと疑われる行為をおこなってはならない。

2 所属長(以下、監督者という。)はパワハラ、セクハラまたはパワハラ、セクハラと疑われる事実を認めながら、これを放置してはならない。

3 職場においてパワハラ、セクハラまたはパワハラ、セクハラと疑われる行為を現認した従業員は、速やかに監督者または相談窓口等に同内容を報告するよう努めなければならない。

4 パワハラ、セクハラに該当する行為を行った従業員は、第〇条に定める懲戒処分の対象となる。

 

第〇条 以下のようなパワハラ行為、または以下の行為と類似の行為を行ってはいけない。

(1) 優位的な立場の従業員が、優越感を持った言動をおこない、下位の立場にある従業員の感情を害すること。

(2) 体調を壊すまで、あるいは体調を悪くするほどに長時間労働や休日出勤の指示命令をおこなうこと

(3) 職場でむやみやたらに部下を怒鳴り、あるいは叱ること。

(4) 部下に雇用不安を抱かせるような言動をし、部下を意のままに操ろうとすること、あるいは精神的なストレスを与えること。

(5) 優位的立場を利用して不正行為や違法行為に部下を加担させること。

(6) 自身の感情を抑制せず、職場の雰囲気を悪くすること。

(7) 人格を否定するような言動および、欠点を粗探しすること。

(8) 人格を傷つける発言を行うこと、他の従業員の前で一方的に恫喝(どうかつ)すること。

以下省略

 

第〇条 以下のようなセクハラ行為、または以下の行為と類似の行為を行ってはいけない。 

(1)性的及び身体上の事柄に関する不必要な質問や発言をすること。

(2)わいせつな画像の閲覧、配布、掲示を行うこと。

(3)性的な噂を流すこと。

(4)不必要に身体に接触すること。

(5)性的な言動により、他の従業員の就業意欲を低下せしめ、能力の発揮を阻害すること。

(6)交際・性的関係を強要すること。

(7)性的な言動への抗議又は拒否等を行った従業員に対して、解雇、不当な人事考課、配置転換等不利益を与えること。

(8)その他、相手方及び他の従業員に不快感を与えるような、性的な言動を行うこと。