能力不足の従業員を指導していく規定
採用した従業員の能力が低くて業務が進まない、うまくいかない場合、どうしていますか。「すぐに解雇している」という事業所は危険です。裁判例(セガ・エンタープライゼス事件H11.10.15)を見ても、「平均的な水準に達していないというだけでは不十分で、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込がないときでなければ解雇は無効である」と判断していて、事業主にとっては非常に厳しいです。
能力不足の従業員がいる場合は、しっかりと教育して能力を向上してもらうよう努力して下さい。その後、事業所が指導、教育を尽くしたにも拘らず能力の改善が見られない場合にどうするか考えていきます。その場合でも、事業所の規模や業種、事業所における異動の実情や難易度に照らし合わせて、他の業務への転換や職場の異動が可能か考慮しなければいけません。小規模事業所で、他の業務や他の職場がない場合は解雇もやむを得ないかもしれませんが、解雇は最終手段であることを覚えておいてください。
当事務所では、能力不足の従業員を指導していく方法を明確にするために、社内規定を作ることを提案します。
また、従業員に指導する内容や教育方法を「指導書」として交付することをお勧めします。指導書には以下のことを記載します。
1.求められる能力の程度
2.現在の能力の程度
3.今後の指導、教育内容
次に、指導書に記載された方法で指導、教育を行ってください。指導、教育した内容が分かる資料を必ず書面で残すようにして下さい。例えば、指導した内容を記載した業務日報や従業員との面談記録、従業員の始末書や経過報告書、業務報告のメール、クレーム報告書等があります。
指導書に記載された方法が終わった後に、現在の能力評価を行ってください。実際の指導に当たった直属の上司や一緒に業務を行っている同僚や部下からも話を聴いて改善されているか検討して下さい。
その後、本人と現在の状況について面接をして下さい。まだまだ改善されていないようであれば、もう一度「指導書」を交付して繰り返し指導していきます。