解雇とは、事業所が一方的に労働契約を解除することで、従業員にとっては大きなショックを受けるものです。解雇という方法が妥当であるかどうか、争われるケースが多いので、事業主さまにとっては慎重に対応すべき事項になります。
以下解雇について注意すべき点を挙げます。
①解雇事由が就業規則に記載されている
解雇については就業規則に記載しなければならない事項になるため、どのような場合に解雇になるか列挙しておく必要があります。できるだけ例を挙げ、最後に「その他やむを得ない事由が生じた場合」と記載しておきましょう。
②法律上解雇が禁止されている事由に該当しない
解雇禁止の事項は次のようなものがあります。
・労働組合員であること、または正当な組合活動を行ったことなどを理由とする解雇
・業務上の負傷・病気などによる休業、産前産後休業、およびその後30日間の解雇
・妊娠・出産・育児休業、介護休業を理由とする解雇
・労働者の国籍・信条・社会的身分を理由とする解雇
・公益通報したこと、監督署へ申告したことによる解雇 など
③解雇事由に合理性がある
「解雇は、客観的に合理的に理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と労働契約法で規定されています。
客観的に合理的な理由とは以下のことから判断されます。
1)解雇理由とされた行為が事実であるか
2)その事実が証拠や証言によって第3者からみても分かるか
3)就業規則の解雇事由に該当し、解雇されても止むを得ない理由か
上記のような理由に該当する例は以下の通りです。
1)労働ができない、とても難しい、不安定である
2)労働能力や技術が著しく欠如している
3)協調性の欠如、勤務態度が著しく悪い
4)重大な職務違反、業務命令違反、守秘義務違反等
5)会社の名誉、信頼を失墜させる
6)重大な違法行為、痴漢、窃盗、飲酒運転死傷事故、セクハラ等
7)経営上必要なとき(業務縮小、事業の廃止など)
社会通念上相当であるとは、以下のことから判断されます。
1)解雇理由につき、事業者が適切な指導、注意、監督を行ったか
2)配置転換や懲戒処分など行い、改善しようと努力したか
3)以前に行った関連違反者に対する処分と比較して、妥当であるか
4)経営上の理由の場合は、従業員に説明したか
解雇する場合、今まで記載したようなことをクリアしていかないと、不当解雇として訴えられることがありますので、安易に解雇にするのではなく、法律の専門家とよく相談しながら解決策を見つけていただきたいと思います。
当事務所は「特定社会保険労務士」の免許も取得していますので、解雇に関する相談にも対応しています。お気軽にご相談ください。
解雇には、普通解雇と懲戒解雇の2種類がありますが、一般的によく行われるのは普通解雇なので、普通解雇について規定例を記載します。
(普通解雇)
従業員は次の各号の事由により解雇されることがある。
①身体又は精神の障害により業務遂行に耐えれないと認められたとき
②能力不足、勤務不良により改善の見込みがないと認められたとき
③規律性、協調性、責任性を欠くため、他の従業員に悪影響を及ぼすと認められたとき
④試用期間中、または試用期間満了時までに、本採用することが不適当であると認められたとき
⑤その他従業員として適格性がないと認められたとき
⑥事業の縮小等、その他やむを得ない業務の都合により必要があるとき
⑦事業の廃止、天災事変その他、これに準ずるやむを得ない事情により事業の継続が困難になったとき
⑧その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき
2.解雇するときは30日暦日前に予告する。予告しないときは平均賃金の30日分を支給して即時解雇とする。なお、予告日数は、平均賃金を支払った日数だけ短縮する。
3.第1項で定める事由により解雇される者より退職理由証明書の請求があった場合は、使用者は解雇理由証明書を交付する。