職場におけるストレス

職場において心の病気になる人が増えています。それはなぜでしょうか。

その原因として考えられるのが「ストレス」です。「ストレス」は程よく人を緊張させて仕事効率をアップさせる働きもありますが、過度にかかると病気を発祥してしまう原因になってしまいます。最近よく聞く「うつ病」という病気もストレスが原因であると言われています。

この「ストレス」というものはどのような時に感じるのでしょうか。それは、個々人によって強弱の差は有りますが、以下のような場合に感じます。

 ・職場の人間関係

 例)上司、同僚、部下との対立、気があわない、周りの支援がない

 ・作業条件

 例)仕事内容があわない、仕事量が多すぎる又は少なすぎる、仕事の裁量がない(決まった事しかできない)、責任が重い、長時間労働

 ・環境条件

 例)職場環境が悪い(暑い、寒い、暗い、うるさい、作業動作がつらい)、単身赴任、転勤、異動など

 

このようなストレス状態が続くと、作業能率が低下したり、集中力が低下し、生産性が低下するだけでなく、労災事故や交通事故を引き起こす可能性が出てきます。また、遅刻、欠勤などを繰り返すようになり、他のスタッフの負担が大きくなって職場の雰囲気が悪くなってきます。

このような職場にならないためにも、職場におけるストレスの原因が何か話し合い、できるだけそれを改善していくような職場になって頂きたいと思います。厚生労働省の「こころの耳」では、メンタルヘルスに関するいろいろな冊子やツールの紹介をしています。その中のもので、職場における快適職場調査メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)などの無料ツールを利用して職場環境の改善に取り組んで頂きたいと思います。

心の健康づくり計画助成金を活用しましょう

 「職場のメンタルヘルス対策を行う上で、何をどのように進めていけばいいか分からない」というお声を聞きます。そのような時は、「心の健康づくり計画助成金」を活用して進めていってはどうでしょうか。

 「心の健康づくり計画助成金」とは、事業者が各都道府県の産業保健総合支援センターのメンタルヘルス促進員の助言、指導を受けて、平成29年度以降初めて「心の健康づくり計画」を作成し、計画を実施した場合に事業者に支給される助成金のことです。助成額は1企業又は1個人事業主当たり10万円(将来にわたり1回限り)です。

 「心の健康づくり計画」の作成に関してはメンタルヘルス促進員が事業場に訪問して助言、指導しますので、難しいことではありません。また、メンタルヘルス促進員は無料で最大3回まで訪問してくれますので費用面も安心です。この機会に積極的にメンタルヘルス対策に取り組んでみてはどうでしょうか。

 

 助成金申請の流れについては以下の通りです。

@本社事業所所在地の産業保健総合支援センターにメンタルヘルス支援の申込を行う。

A「心の健康づくり計画」を作成するために、メンタルヘルス促進員から助言、指導を受ける。

B「心の健康づくり計画」を作成する。

C労働者に「心の健康づくり計画」を周知する。

D「心の健康づくり計画」に基づき、メンタルヘルス対策を実施する。

E計画の一部又は全部が実施された時点で、本社事業所所在地の産業保健総合支援センターにメンタルヘルス促進員の訪問依頼をする。

Fメンタルヘルス促進員による「心の健康づくり計画」に基づいたメンタルヘルス対策が実施されたことの確認を受ける。

G必要な書類をそろえて、労働者健康安全機構へ助成金の支給申請を行う。

 

 まずは本社所在地の産業保健総合支援センターにお問い合わせして下さい。

(兵庫県に関しては当事務所でも対応できますので、お気軽にお問い合わせください。)

 

職場のメンタルヘルス対策

 

職場におけるメンタルヘルス対策としてどのように進めて行けばいいでしょうか。

現在、職場で心の病気の人がいらっしゃる場合と、いらっしゃらない場合では取り組むべき順番が違ってきます。

 

1.現在問題がない事業所 

 

 @メンタルヘルス担当者を決める

 まずメンタルヘルスに関する担当者を決めることから始めます。この担当者というのは、その事業所で主に窓口になって不調者本人と上司や産業医など周りの人との調整をする人と考えて頂き、ルール作りのたたき台を作ったり、衛生委員会での意見の集約をしたりする人と思って頂ければいいと思います。担当者として選任される役職としては、衛生管理者や人事部長・人事課長が多いと思います。

  

 A職場内外の相談体制を整える

 次に、メンタルヘルスに限らずなんでも相談できる窓口を整える事が必要です。すでにセクハラ、パワハラ相談窓口がある事業所であれば兼用でもいいと思います。窓口として手軽なのがメンタルヘルス担当者へのメール相談です。何か困ったことがあった場合にメールで相談予約をして、希望日時を調整して会議室などで相談を受けるというのがお手軽です。

 また、委託している産業医の先生にメンタル関係の相談を受けてもらうという方法もあります。産業医の先生と、どのようにかかわって頂けるか費用の面もあわせてよく相談しておくようにしましょう。

 事業所外の相談窓口としては労災病院などで無料の電話相談を受け付けてくれるところがあります。また、産業保健総合支援センターにおいて、メンタルヘルス相談員の先生が事業所からの相談に無料で応対してくれますので、お気軽に問い合わせください。

 

 B職場内でのルールを決める

 次に、今後心の病気にかかってしまった(かかっているかもしれない)労働者が出た場合に、どのように対応していけばいいかを担当者や産業医を中心としてよく話し合い、職場でのルールを作ることが必要です。

作り方としては、今ある就業規則の中の私傷病規定や休職規定を参考にして、メンタル関係の病気に対しても同じように対応することを前提として、復職判定基準をどうするか、試し出勤制度を認めるかどうか、復職した後の再発休業に対する休職期間の通算はどうするのかなど細かく決めていくという方法がいいと思います。

 当事務所では、メンタルヘルス不調に対応した休職規定を作成しています。詳しくはこちらをご覧ください。

 

 C職場内で研修を行う

 その次に、管理職や一般の労働者にむけてメンタルヘルスに関する研修を行うことが必要です。心の病気はストレスによるものなので、誰でもかかる可能性があります。そのことを認識してもらうために、全労働者に対してセルフケア研修を行い、自分自身で自分の健康を守って行くよう指導してもらいたいと思います。また、管理職に対しても誰もがかかる病気である事を分かってもらうと同時に、部下の健康を守って行く義務があることを理解してもらい、心の病気になる部下がでないような職場にしてもらうよう、指導していくことが必要です。

 

 D職場環境の問題点の把握と改善を行う

 職場内でのストレスの原因はなにか、日頃から管理職自身が見回りなどをして調査したり、部下との面接などで聞き取ったりして改善できるところから改善するようにしましょう。「職場のストレス」の項目で紹介した快適職場調査などのツールを利用して全労働者から意見を集約するのもいい方法でしょう。

 

2.現在問題が発生している事業所

 

 @メンタル不調者の対応が最優先

 すでに心の病気を発症していると思われる労働者がいる場合は、その労働者の対応が最優先です。現在休業に至っていないが体調が悪い労働者であれば、早急に専門医を受診するようすすめてください。メンタル不調なのかどうか判断が出来ない場合はまず本人の話をよく聞くようにしてください。その中で、よく眠れない(何度も目が覚める)、食欲がない、めまいがする、頭が痛いなど何か体調不良を訴えられたら、とりあえず内科を受診するように勧めてください。そこで異常がなければ内科から精神科をすすめてくれる先生もおられます。また、どうしても受診しない労働者については仕事上のミスやや遅刻などを理由に業務命令として産業医の先生を受診するように説得してください。

 すでに休業中の労働者がいる場合は、職場のルールや傷病手当金などの説明を本人または家族に伝えるようにしてください。特に、休職期間の満了時期は必ず説明しておかないとトラブルの原因になりますので注意してください。また、現在の病状確認のためにも月1回程度連絡をとるようにしてください。

 職場復帰が近い労働者であれば、主治医の先生の診断書の提出を求め、できれば産業医の先生から主治医の先生に内容について確認してもらうようにしてください。復職可としているがどの程度の仕事ならできるのか、車の運転や機械の操作は可能なのかなど復帰する労働者の仕事内容をよく説明して、主治医の意見を聞いて頂きたいと思います。その上で産業医の先生の指導のもと、その労働者の復職支援プログラムを組んで頂きたいと思います。

 

 A上記のことを行いながら職場のルールを決めていく

 メンタル不調者の対応をしていくと自然に担当者は決まってしまうもので、職場の就業規則等をよく確認しながらメンタル関係の病気にも対応できるルール作りを@と同時進行でやっていく事なります。実際の問題が発生しているのでルール作りも早く作成することになります。

 

 B相談体制の整備や研修を行う

 「1.問題がない事業所」で記載したAとCをすすめていくことになります。

 

 C職場環境の問題点の把握と改善を行う

 メンタル不調になった人の原因が職場内にある場合はその原因を早急に改善するようにしましょう。それ以外のことについては上記「1.問題がない事業所」で記載したDと同様です。

 

各都道府県にある「産業保健総合支援センター」では、メンタルヘルスについての相談を無料でお引き受けしています。また、職場での復職支援のルール作りのお手伝いや管理職研修を行っています。(すべて無料)

当事務所の福下も、兵庫県において産業保健総合支援センターの促進員として事業所を訪問しています。メンタルヘルスに関してお困りごとがありましたら、お気軽にセンターにお申し込みください。(地域によっては福下がお伺いする可能性があります。) 

   

復職可否の判断基準

 メンタル不調で休職していた労働者から復職できるという意思表示があった場合、事業所としてどのように対応していくか決まったルールはありますか。就業規則や社内規定がある事業所であれば現在の規定がどのようになっているか確認してください。簡単な規定しかないので詳細は決まっていないとか、そもそもそんなルールはないという事業所様でしたら、以下の復職可否の判断基準を参考に今後考えてみてはどうでしょうか。

 

1.本人に復職できるという意思表示があること

 単に病状が回復して通常の生活ができるようになったから仕事がしたいという気持ちだけでなく、今まで行っていた業務を通常の時間、継続して行うことができるという意思表示があることです。面談時に「休職期間が終わってしまうから」などと発言されるようでは、時期尚早ではないでしょうか。

 

2.面談または文書で具体的な「できること」を確認すること

 以下のようなことを具体的に確認してみてください。

 ・普段の生活リズム

 ・現在の症状、通院状況、服薬状況

 ・業務関連の準備、集中力、遂行能力

決まった時間に起床し、規則正しく生活ができている、通勤時間帯に一人で安全に通勤できる、会社関係の人と誰でも話ができる、業務関連の本を集中して読むことができる、など事業所として業務遂行レベルに達しているかどうかの判断基準を決めてください。

 判断基準を決めるのは事業主や事業所です。主治医の意見に翻弄されないようしっかりとした基準を定めてください。事業所規模や職種によりますが、短時間勤務や異動ができるのか、試し出勤制度等を取り入れるのか、上司や周りの支援がどこまでならできるのか(どのぐらいの期間、どれぐらいの業務)、よく事業所内で話し合って決定して下さい。

 

3.主治医が通常勤務をした場合に、症状が増悪せず就業できると証明すること

 復職判定をする上で、必ず医学的に問題がないと証明されていなければ復職はできないとして下さい。主治医が業務内容を正確に把握することは難しいですが、前もって文書で以前の業務内容(運転操作あり、機械操作あり、パソコン入力ありなど)を説明することによって、少しは想像しやすくなるのではないでしょうか。また、事業所の復帰基準も文書で配布し、主治医の意見書として就業制限が必要なのかどうか、復職して症状が増悪しないかどうかなどチェックして回答できるような様式で配布すれば、主治医も答えやすくなるし、負担も少なくなるのではないでしょうか

 

4.職場が復帰できる環境であること

 休業していた労働者が復帰してくる上で気を付けるべきことは何か、事前に主治医の意見を確認しているので、その「配慮」が職場でできる範囲であるのかどうか検討して下さい。「単純作業のみ可」、「1日4時間勤務から就労可」など条件つきの復職の場合、それが職場で対応できるのか現場の上司、同僚等一緒に働く労働者と話し合ってください。同じ職場で働く他の労働者に過度の負担を強いるような復帰はやめた方がいいと思います。

 

 以上のような事を確認した上で復職可否の判断を行ってください。判断をするのはあくまでも事業主ですが、事業主、人事労務担当者、直属の上司、安全衛生管理者、産業医等を構成員とする「復帰判断会議」等で協議した上で決定して下さい。

 

 当事務所では、復職する前から復職して就業出来るまでの対応や書式についてご相談に応じます。お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 


労災認定されないために

 メンタルヘルス不調で労働者が休業してしまったり、退職してしまった場合、企業としては大事な労働力を失い、大きな損失になります。それが、業務上の原因で心の病気になってしまったとしたら、労働者が労災請求をして、労災認定がされる可能性が出てきます。そして、労災認定がされることによって民事上の損害賠償請求を提起されるリスクも生じます。そうなれば、企業イメージが低下し業績悪化につながるおそれもあります。そのような事態を防ぐために、事業所としては日頃から労働者の職場環境を良くする努力が必要になってくると思います。

 労災認定されないために、どのような点に注意すればいいか以下で説明していきます。

 

1.長時間労働をさせない

 1ヶ月100時間以上の残業をすると、それだけで「業務による心理的負荷表」では「強」とされ、労災認定され易くなりますので、100時間以上の残業は絶対させないようにすることが大事です。場合によっては1ヶ月80時間以上でも労災認定される可能性はありますので、できれば1ヶ月の残業は80時間までになるよう、時間管理して頂きたいと思います。例えば、1日4時間、1週間20時間で1ヶ月80時間になってしまいますので、残業しない曜日を決めるとか、業務効率を考えるとか、人員配置や増員を考えるなど対策が必要になります。

 

*残業時間は休日出勤も含めた時間です。

 

2.職場を相談しやすい環境にする

 職場の周りから支援してもらえる環境であれば、ストレスが軽減されると言われますので、相談しやすい雰囲気をつくるよう心がけてください。例えば、慣れない仕事については先輩や上司のマンツーマンでの指導があるとか、仕事の相談はこの人に言えばいいというような担当制にするとか、1人でする仕事は作らないでチームで仕上げるとか仕事のやり方を変えるようにしてください。また、上司が仕事の進歩状況をチェックするようにし、進んでいない仕事については部下に声掛けをし、部下の話をじっくり聴くような体制を作って頂きたいと思います。

 それから、職場で困ったことがあれば気軽に相談できる「なんでも相談窓口」を設置して、全従業員に周知するのもいい方法です。「相談窓口」という大層なものでなくても、総務に「なんでも相談メール」といった専用のアドレスを設けるだけでも従業員にとっては安心して働くことができるようです。

 ここで大事なことは、気軽に相談してもらうために、個人情報は守られるということと、相談したことによって人事評価などで不利益な待遇は絶対にしないということを従業員によく周知するようにしてください。このことを怠ると、名前だけの相談窓口になりますので注意してください。

 

3.従業員の教育をする

 ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行をうけた場合は、心理的負荷の強度が「強」となり労災認定される可能性があります。ひどい嫌がらせの具体例として

 @部下に対する言動が、業務指導の範囲を超えており、その中に人格や人間性を否定するような言動がふくまれており、かつこれが執拗に行われた

 A同僚等による多人数が結託して、人格や人間性を否定するような言動を執拗に行われた

 B治療を要するような暴行を受けた

が挙げられています。要するに、業務の範囲を超えた行き過ぎた指導や業務に関係ないことを強要すること、または仕事を与えないことや無視すること、見下すしぐさをすること、他の従業員の見ている前で大声で執拗に注意することなどはパワハラとみなされて、それによって精神疾患にかかってしまった場合は労災に認定される可能性があります。

 そのようなことを防ぐために、部下に対してどのような方法で教育すればいいのか、他の従業員と一緒にどのようにすれば気持ちよく仕事ができるのかなどを教育していく必要があります。どんなことがパワハラになるのか、パワハラをするとどんなリスクがあるのかをセミナー形式で教えたり、掲示板にポスターを貼って周知したり、朝礼や会議の時に発表したりして、まず従業員に意識してもらうようにして下さい。そして、パワハラやセクハラの行為は絶対に許さないという事業所の強い意思を全従業員に浸透させ、そのような行為があれば(見つければ)必ず相談するように教育して頂きたいと思います。

 

メンタルヘルスやパワハラの講師を承っておりますので、外部講師をお考えの際はお気軽にお問い合わせ下さい。